― BLUE ―

傘をしっかりと巻きこんだあと、濡れた手をどうようかと見つめる。再びため息が出た。


「あ〜〜〜、もおっ」


朝から、なんなのこのテンション。
自分うざすぎる。

濡れた鞄と制服にタオルを押し付け、雨にぬれてしみこんだ水分をいくらか拭き取っていく作業に没頭していると、鞄にぶら下がっているキーホルダーが目に入った。まだそこに未練がましくブラブラぶら下がっている遼汰とお揃いのそれ。

もう別れたのだし、外そうとは何度も思ったんだけれど。まだここにある。

気に入っていたものが、ただのガラクタになってしまうのが寂しい、とか? よくわからない。

だってキーホルダーに罪はないのだ。遼汰は外してしまったのかな。


そして雨を吸い込んでずしりと重くなった身体と気持ちを、引きずるように教室へ向かおうとしたとき——


「!!!??」


たった今下駄箱に入ってきたと思われる人が、傘についた雨水をバサバサと乱暴に振り落とした。

それはあたしの方を目がけ大量の水しぶきとなって飛んでくる。

なんなの!!


「ち、ちょっと!」


見上げて睨み付けた。

ええっと、この顔。同じクラスだ。確か———…、杉本だ。

高校に入ってから2か月が過ぎようとしているけれど、あたしはクラスであまり喋らない人の名前をようやく最近覚えた程度。親友だった咲とは同じクラスだけれど話すことはなくなり、その代わり別中出身の美耶と仲良くなった。


「——なに。なんか用?」

「いや、あの、水? 飛んでんだけど? すごい濡れたんだけど?」


杉本はまるで雨なんか降ってなかったかのように、どこか涼しげな顔であたしを見下ろした。じめじめ蒸し暑いこの下駄箱で、それはいやに目立っているように思う。

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