― BLUE ―
「うん、かなり」
「へえー…」
そうなんだ。ああいうふざけた奴がモテてしまう世知がない世の中なのねぇ。それとも俺様男が今の流行とか?
惚れてる女が見てみたいよ、まったく。
「あーなんかあたし制服ビチョビチョだし着替えてくる」
雨のせいで気持ち悪くはりつく制服からジャージへ。
紺色で学校の名前入りの超ダサなんだけれど、制服よりも楽だから好きかもしれない。
そんなジャージ姿のあたしを見た美耶はお腹を抱えケラケラと笑う。
「あんた似合いすぎだから」
「でしょ?」
ちょっと虚しい気分だよ。これじゃあ県内で有名なかわいい制服も台無しかもしんない。
溜息も出るって話でさ。
そういえば3時間目が始まっても、まだ杉本の姿を教室で見ていない。
雨の日なんかは特に欠席が多くて、視界に入る席が空席なのはチラホラある。そのせいで杉本の席が空席なのかまでは全く気にならなかった。どこへ行ったのだろう。
「はあ…」
しかしつまらない授業だ。ノートも湿っているし、ほんと雨って最悪。
てかあの先生の髪も、まじきつい。頭に貼り付いてる髪が今日は濡れてさらに酷い状態だ。
美耶はちゃんとノートとってる。ほんとえらいなー。あたしと大違い。頭もよくて美人で、しかも優しい。あとでノート見せてもらわないと。
クラスメイトの観察をしながら興味のない教科書をパラパラめくる。それにも飽きてきたころ、退屈な授業を上の空で眺めた。
高校生活…。青春謳歌してもっと楽しまなくちゃ…ってか。
だけどそれはもう、かなり焦りにも似た感覚。
漫画に出てくる高校生のようなキラキラが待ち構えているようにも思えない。このままダラダラと高校を卒業して、振り返ってもなにも残っていないなんていう、青春とも呼べないものが残るだけのような気がしてならない。