きたない心をキミにあげる。


しかし――



「ごめん」


と悲しげな声が聞こえ、目を開けた。



視界に入ったのは、彼のふわりとした髪の毛。


圭太はがくりと下を向いている。



両肩が押され、距離を遠ざけられた。



「……別に、いいのに」


「ごめん。足が」


「え」


「足が……痛くて……」



圭太はつぶやきをソファーに落としながら、肩で息をしはじめた。


本当に足が痛んでいるのだろうか。



心配になった私は、大丈夫? と彼の肩に触れようとした。



しかし、ぱっと手で振り払われた。



「圭太?」


「……あのさ、一体何なの?」



初めて聞く、彼の冷たい声に胸が痛くなる。



「愛美は弘樹のことが好きなんじゃなかったの?」


「え?」


「寂しいから俺に近づいてるだけでしょ? それとも優しくされたら誰にでもなつくの?」


「違っ……」


「俺を使ったり傷つけたりするのは全然いいんだけど。その……今、こういう感じになってるのって……やっぱりおかしくない?」


「……っ!」



否定しようとしても、どう伝えたらいいか分からない。


言葉の代わりに、ぽろりと涙があふれだした。



今まで圭太の前では泣きたくない。笑っていたいと思っていた。



だって――新しい恋かもしれないと思っていたから。



本当、私って自分勝手でワガママなやつだ。



次々と涙が頬に伝い、私も息が苦しくなる。



ひっくとしゃくりあげると、圭太ははっと我に返ったように顔を上げた。


そして、テーブルに置かれたメガネをかけてから、両手を額にあて頭を伏せた。



「ごめん。言いすぎた」


「ううん。圭太、ごめんね……っ、私が、こんなんだから」


「違う。今言ったこと、全部忘れて」


「圭太の、言う通り……っ、だから。本当ごめんっ。……っく」


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