きたない心をキミにあげる。


ある日、『卵買い忘れちゃった、どうしよう~』と母が台所で言った時、

珍しく父は僕を車に乗せてスーパーに行った。



『愛美ちゃんの写真、消去したのはお前だろ』



僕は、さぁね、と答えたが、父は人気のない道路に車を止めた。


急に思いっきり首を絞められた。



『愛美ちゃんに無理やり優しくしてるのバレバレなんだよ。どうせ俺の昔の話とかしたんだろ? そうやって愛美ちゃんの気を引こうとしたんだろ?』


『違……っ』


『はっ、所詮お前も俺の血が流れてるクズなんだな。ただ、俺だって家族を壊さないよう気をつけてるんだよ。お前もそこだけはちゃんとしてくれよ』



間も無く手を離され、これは殺しではなく脅しが目的だと分かった。



家に戻れば、父は一般的な家庭の父として、ニコニコと母の手伝いをしていた。



その様子に吐き気がした。


嫌悪やら憎悪やら、汚い気持ちが心を埋め尽くしていく。



しかし、隣の部屋には愛美がいる。


1階には何も知らないバカな新しい母がいる。



1人で閉じこもり、物や壁にあたり散らすことができなくなってしまった。


汚れた感情の全てが自分の中に留まり、増殖を繰り返した。


< 197 / 227 >

この作品をシェア

pagetop