きたない心をキミにあげる。





愛美に好かれようと思った僕は、彼女に対する態度を少しずつ変えた。



一つ下の愛美に勉強を教えたり、学校の話や悩みを聞いたり、積極的に彼女に関わるようにした。



『ねえ、お兄ちゃんって呼んでいい?』



長年母親しかいない寂しい生活を送ってきた愛美。


予想通り、彼女は僕になついてくれた。



次第に僕に告白してくる女子と似たような視線を向けてくるようになった。



僕は、僕たちだけの秘密、として父の真実を愛美に伝えた。



女子高校生をお金で買ったのがバレて、前の母と離婚したこと。


愛美をしょっちゅうそういう目で見ていること。



彼女は恐れをなしたのか、父を避けるようになり、ガードを固くした。


服や下着は洗濯機を回す直前に入れるようになった。


制服も靴も自室の外に置かないようにした。



愛美は父と必要なこと以外は話さなくなった。


よく考えると思いあたる節がたくさんあったらしい。



『時々夏服とか下着とか無くなったり戻ったりしてる気がして』


『そうだ。愛美の部屋に鍵、つけよっか? おれ家具の組み立てとか得意だし』


『うん……ありがとう』



内からも外からもかけられるタイプの鍵をネットで一緒に探して買った。


僕も入れるよう、4桁の番号を押すタイプのものにした。


愛美にまつわるものが1階に残っていた時は、部屋に入れてあげた。



リビングに2人がいる時は、僕も一緒にいるようにしたり、

父のパソコンを探って、愛美の写真を全部消去してやったりもした。



『お兄ちゃんが守ってくれたんだね。ありがとう』


『ううん。愛美が安心してこの家で暮らせればいいなって思っただけだよ』



そう伝えると、彼女は一般的に可愛らしいと思われる笑顔を僕に向けた。



< 196 / 227 >

この作品をシェア

pagetop