きたない心をキミにあげる。
☆
愛美がいなくなってから。
俺は時々、1人で弘樹のお墓参りに行っていた。
毎回、駅前の花屋でどれを買ったらいいか迷った末、結局は定番の菊の花だけを買い、霊園へと向かう。
たくさんの同じようなお墓が並ぶ芝生を進み、彼のお墓へ。
これは、ゴールデンウィーク明けくらいのことだったろうか。
「あれ?」
前に俺が来た時から花が変わっていた。
カラカラになって風に吹かれていたのは、菊だけではなかった。
元々は色とりどりだったはずの花のようだ。
きっと、愛美も、ここに来たんだ。
持ってきた菊の花と取り換え、線香をたく。
右足の痛みをこらえながら、ゆっくりとその場にしゃがみこむ。
「いて……っ」
あの事故からおよそ半年が経った。
俺の足は完治する、はずだった。
普通に2本の足だけで歩けるようになり、日常生活には問題がない。
だけど、しゃがむ時や、急に力を入れる時に、つんと痛みが走る。
軽い後遺症が残った。
俺は、これで良かったと思っている。