きたない心をキミにあげる。



夜9時。少しずつ駅前から人が減っていく。



ロータリーでは、大きな黒い車がエンジン音をうるさく鳴らしている。


広場の奥には、派手な若者がたまっていた。


目が合ったら声かけられそうだな。



セーラー服に、足元はお母さんが近所用に使っているサンダル。


しかも、ずっとここに座りっぱなし。絶対訳ありだって思われる。



誰か泊めてくれればありがたいけど、チャラそうな軍団だし関わりたくないかも。



誰とも視線を合わせないよう、足元のサンダルを見ると、


「あのぅ」


という弱々しい声が降ってきて、びくっと体が震えた。



聞き覚えのある声。急いで顔をあげる。



「な、んで……?」



そこにいたのは、グレーのパーカーを羽織った、黒縁メガネの男の子。



もちろん右足は真っ白なギプスで固められたまま。


松葉杖に体重を乗せ、不規則なリズムで私に近づいてくる。




< 47 / 227 >

この作品をシェア

pagetop