きたない心をキミにあげる。



「何でって……。ここにいるってライン来てたから」


「でも、あんた足そんなんなのに。バカじゃないの?」


「うん、ごめん」


「何で謝るの? てか、何で来るの?」


「ごめん」



1人でここにいるのは心細かった。


来てくれて、嬉しかった。



だけど、やっぱり水越圭太に素直な言葉は吐けなかった。



彼を呼ぶようなメッセージを送ったのは、私なのに。


いい人すぎるだけか、こいつは。


それとも――



「俺、言ってなかったけど、事故に遭った時、弘樹に助けられた」


「え?」


「車が来る瞬間、あいつ、俺のこと突き飛ばした。だから俺は今、生きてて……」



光を失った瞳がメガネ越しに揺れている。


初めて知った事実に、私の心も揺さぶられる。



うぇーいと騒ぐ若者や、疲れた顔のサラリーマン、ふらふらと歩く酔っ払い。


そんな風景の中、私たちの間だけ、世界が切り取られている。



軽く息を吸ってから、私は水越圭太にピントを合わせた。



「ねぇ、お兄ちゃんのことで罪悪感持ってるんだったら、私のこと助けてくれない?」








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