眼鏡とハンバーグと指環と制服と
……そっと、なつにぃの手が背中に回って、抱きしめられた。
涙が、嘘みたいにぽろぽろ落ちていく。

「大丈夫。
大丈夫だよー」

なつにぃの声は優しい。
凄く、落ち着く。

「僕はね、あのとき誓ったんだ」

「あのとき?」

「うん。
そう。
ゆずちゃんは忘れちゃってるけど。
あのとき僕はね……」


……ゆずちゃんのお父さんとお母さんが亡くなったとき。

普通の子ならわんわん泣いてるはずなのに、五歳のゆずちゃんは全然泣かなく
て。
まわりの大人は勝手に「情が薄い」とか「強い子だ」とかいってたけどね。
でも、隣に並んでた、僕の学生服の裾をぎゅっと掴んだゆずちゃんの手は、震
えてた。

お葬式が終わってやっと落ち着いたと思ったら、ゆずちゃんがいなくて。
慌てて探したら、納戸の中で膝抱えて蹲ってた。

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