眼鏡とハンバーグと指環と制服と
声かけて、顔上げたら、ひとりなのにそれでも、口をへの字に曲げて泣くの我
慢してて。
抱きしめて
「泣いていいよ」
っていったら、堰を切ったようにわんわん泣き出した。

そのとき、わかったんだ。
ゆずちゃんはひとりじゃ泣けない、不器用な子なんだって。

そしたら、たまんなくなって。
何故か思ってた。

僕がずっと、ゆずちゃんを守っていこう、って。
絶対にゆずちゃんをひとりしない、って。

そう、神様に誓ったんだ。


「……思い出した」

「ゆずちゃん?」

「なんで、どうして泣いたかなんて覚えてない。
だけど、こうやって泣いた気がする」

「……そっか」

時々不意に蘇ってくる、なくしたはずの私の記憶。

両親のお葬式の日だったっていわれても、やっぱりぴんとこない。
だけど、こうやって泣いたことは思い出した。

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