眼鏡とハンバーグと指環と制服と
泣いても泣いても、涙は止まらない。
夏生はずっと、私を抱きしめて背中とんとんしてくれてる。

「夏、おまえ、どうしてここに?」

「亜紀ちゃんが連絡くれたから、タクシー飛ばして帰ってきた」

「亜紀、おまえ」

「……だって、非常事態だったろ」

「ああもう。
夕葵の涙、止まらない。
……おばさん、夕葵の薬、もらえますか?」

「え、ええ」

「夕葵。
これ飲んで。
落ち着くから」

「うん……」

手渡された薬を飲むと、夏生はまた私を抱きしめてくれた。

「いろいろいっぱいいっぱいで、ぐちゃぐちゃだと思うけど。
すぐに落ち着くから。
いまはゆっくり眠ってて。
夕葵が眠ってるあいだに、全部片付けてくるから、大丈夫」

「……なつ、き?」
< 450 / 613 >

この作品をシェア

pagetop