プロポーズ(第2話)
プロポーズ(第2話)

「ふーん、意外とすいてるね」

「そうね。平日だし、まだ夏休みに入らないから」


七月の平日に、あたしと涼一はN県立美術館に来ていた。

先週から開催されているモディリアーニ展を見るためだ。

涼一の言うとおり、思ったより客は少ない。

その分、ゆっくりと絵を楽しむことができる。


「なかなかすてきね」


絵を見ながら、あたしは感想をもらす。


「そうだね。麻衣はどんなところがいいと思う?」

「うーん、目の哀愁かな」

「そうか。哀愁か」


モディリアーニの描いた人物画は、どれも目に哀しみをたたえているように、あたしには見える。

それは、彼が生涯売れない貧乏画家だったところから来るものかもしれない、と思う。


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