暁天の星
「里香。」
下駄箱で靴を履き替えていると、聞き慣れた声があたしを呼んだ。
「一緒に帰ろ。」
隣に並んだリュウに頷いて、2人で学校を後にする。
早帰りのおかげで一緒に帰れた。
「友達できた?」
リュウの質問にあたしは首を横に振った。
「まだできてないよ。」
「なんだ。てっきりもういるのかと思った。」
「あ、でも、1人話したよ。ほら。」
左手の甲に書かれたマジックペンのインクを見せる。
途端にリュウは顔をしかめた。
「…なにこれ?」
「なんか、原田くん?に書かれたの。よかったら連絡くれって。」
「へえ。そうなんだ。」
それ以上リュウは何も聞いてこなかったし、あたしも話すことがないからそのことには触れなかった。
なんだか後ろめたくて両手をポケットに突っ込んで。
隠す必要のない右手はカモフラージュ。
同じ帰り道なんて、貴重なのにな。
「ねえねえ。スーパー寄りたい。」
1回家に帰っても保育園のお迎えの時間に余裕があるし、少し遠回りもできる。
「…荷物持ち?」
「な!違うよ!」
「はいはい。」
お伴しますって笑ってくれたリュウと大っきなスーパーへ向かった。
久しぶりにゆっくり買い物ができるし、お米とか重いものも買っていこう。