暁天の星


「里香。」



下駄箱で靴を履き替えていると、聞き慣れた声があたしを呼んだ。





「一緒に帰ろ。」




隣に並んだリュウに頷いて、2人で学校を後にする。



早帰りのおかげで一緒に帰れた。





「友達できた?」


リュウの質問にあたしは首を横に振った。




「まだできてないよ。」

「なんだ。てっきりもういるのかと思った。」

「あ、でも、1人話したよ。ほら。」





左手の甲に書かれたマジックペンのインクを見せる。


途端にリュウは顔をしかめた。





「…なにこれ?」

「なんか、原田くん?に書かれたの。よかったら連絡くれって。」

「へえ。そうなんだ。」




それ以上リュウは何も聞いてこなかったし、あたしも話すことがないからそのことには触れなかった。


なんだか後ろめたくて両手をポケットに突っ込んで。


隠す必要のない右手はカモフラージュ。




同じ帰り道なんて、貴重なのにな。





「ねえねえ。スーパー寄りたい。」




1回家に帰っても保育園のお迎えの時間に余裕があるし、少し遠回りもできる。





「…荷物持ち?」

「な!違うよ!」

「はいはい。」




お伴しますって笑ってくれたリュウと大っきなスーパーへ向かった。





久しぶりにゆっくり買い物ができるし、お米とか重いものも買っていこう。


< 57 / 135 >

この作品をシェア

pagetop