新・鉢植右から3番目


 なので、体は普通の産後の母親よりはかなり楽だったと思う。加えて家事でイライラすることもなく、床上げが終わって外出できるようになれば「気分転換にいってらっしゃい」と両母親が送り出してくれたので、私は大好きな川原に散歩まで行けたりしたのだった。

 それも、非っ常~に感謝している。

 ただしかし、女性というのは欲深く、コレが叶えば次はアレと出てくる生き物だとはよく言ったなあ、と思うのが、現在発動中のホルモンの嵐の中に放り込まれていた私には苦痛なのだ、と判った時だ。

 常に家の中に人がいる。それは結構ストレスだと気がついた。

 そんなわけで、娘の一ヶ月検診が終わるのとほぼ同時くらいに、両家の母親には頭を下げてお願いして、家に手伝いにくるのは週に2回で十分でございます、と伝えた。

 母親たちは一瞬残念そうな顔をしたけれど、彼女達だってそれなりに忙しい身なのだろう、あっさりと頷いて、私は娘と二人で家にいられることとなった。

 うららかな春の光を浴びて昼間にぼーっとする。しかも、後ろにはすやすやと眠る赤ん坊つきで。・・・この私が!!うわーお、ほんと、神様ありがとうございます!大事に育てます!そう、一日に何回も心の中で祈りつつ言うのだった。

 実をいうと、その間、夫の大地のことはほとんど忘れていた。

 つまり、出産してからここ1ヶ月の間。

 だってねえ、ほら、ヤツは無口なのよ。無口なの。ただデカイ男がぬぼーっと帰ってきて、ほぼ無言でご飯を食べているのよ。それで娘と私の位置を確認すると、これまた無言で自分の世話をして、あとは就寝まで本を読んだりするの。つまり、これまでと同じく。


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