プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

◇◇◇

仕事中に祐希から呼び出されたのは、オープンから二日後の月曜日のことだった。

朝から本社にいなかったところをみると、今日も七号店にいるようだ。
『午後一時頃戻りますから、応接室Aで待っていてください』と祐希からLINEが届いたのだ。

あの夜のことをなにか聞かれるのだろう。
できればふたりきりになりたくない。
なにか逃げ口上でもないかとスマホを握り締めて考えていると、「お昼に行きませんか」と美月が声をかけてきた。


「気難しい顔してどうしました?」


彼女がスマホを覗き込むものだから、慌てて画面を隠した。


「あらら? 怪しいですねぇ」


そうやって勘繰るのは勘弁してほしい。
そこまで怪しいことじゃなくても焦ってしまうから。


「本当は彼氏がいるんじゃないんですか? その彼と揉め事でもあったとか?」


聞きたがりの虫がうずいたのか、美月が一心に探り出す。
眼鏡の奥の目がキラキラと光っていた。


「ほんと、そんなんじゃないから」

< 200 / 260 >

この作品をシェア

pagetop