プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

正式な社会人になってまだ五日。
私のやっているのは、祐希が使う資料をパソコンで作成することが主。
手取り足取りとまではいかなくても、祐希をサポートできるようになるまでは相当長い道のりだ。


「それでもいいの。初めて働く喜びを味わえてるんだから」


自分で言って妙に納得する。
美月という友達もできたし、家以外に私の居場所がある。
なんて素敵なんだろう。


「祐希、先に行ってるよー」


ステップでも踏むように軽やかに足を出した。
気持ちが軽いと、空気も優しい。

ストレッチを始めた祐希を置いて悠然と走っていたが、当然ながらすぐに追いつかれて私の隣に彼は並んだ。


「そういえば、江橋さんに聞いたよ」

「なにをですか?」

「祐希伝説。ものすごい量のコートを全部売り切ったって。上の人も無理だって言ってたんでしょう? それをやり遂げちゃうなんて、さすが祐希」

「無理だと言われると余計にやり遂げたくなるんです」

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