SaltyTriangle*

私に呼ばれてこちらを振り向いた男子が、あからさまに怪訝な顔を向けてくる。


「ちょっとー!何よその顔、おはよう!」

駆け出した勢いのままその男子に抱き着くと、これまたすごい勢いで男子が仰け反る。


「おまっ、やめろ!汗だくのまま抱き着くの!」

彼は私を引き剥がしてから鞄をあさると、タオルを取り出して私の顔面に押し付けた。


「先に行くって学校行ったと思えば、朝っぱらからサッカーしてたのか。」

呆れながらそう言うこの男子は、私の幼馴染・相馬楓(そうま かえで)

私が言うのもなんだけど、完璧っていうのは楓のためにある言葉だと思う。

モデル並みに整った顔立ちにスラリとした長身、頭が良くて常に成績トップ。クールだけど優しくて、妙に大人びた雰囲気が女子の心を鷲掴み。

そう、もうお気づきだろうけど、この男めちゃくちゃモテる。


それでも調子に乗らないのが楓の良いところ。


漫画から飛び出てきたような完璧男子のくせに、これっぽっちも壁がない。


「お前は高校生になっても少年のようだな。」

楽しそうに私に笑いかける楓。
いつの間にか周りは女子生徒(楓のファン)で溢れていて、その笑顔に黄色い歓声が上がる。


「え、なに。すげぇうるさいんだけど。」

「あんたのせいでしょうが…。それと100歩譲って少女な、少年はヤメて。」


モテてる自覚はあるようだけど、自分のどんな仕種や表情が女子を虜にするのかは分かってないらしい。


楓と出会ったのは小学3年生の時だから、もう6〜7年一緒にいることになる。

今更気を遣うような仲じゃないにしても、少年はちょっとね……


こんな時、少し膨れた表情で可愛らしく見せられれば良いのに、照れ臭くてついつい変な顔をしてしまう。


「なに、その表情。怒ってんの?かーわいー。」


そう言って私のほっぺをつねる楓。
天然なのかわざとなのか。

もう、高校生なんだから。

いつまでも、子供じゃないんだから。


こんなの、好きにならない方がどうかしてる………。





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