まさか…結婚サギ?

守護者


彼ときちんと話したおかげで、あんな別れ方をして由梨は思っていたよりも傷ついていた自分に気がついた。

渉が騙されていた事は、いっそ自業自得だとも思えていたけれど、由梨は渉と別れた理由を誰にも告げていなかった…。その事が傷ついていた証拠に思えていた。
もっとあの時に彼と向き合う努力をしていれば、とそう思った事もあったから…。

田中先生と、渉が来て4日目もうすぐ松元先生が帰ってくるからそうすればここで、渉と会うことはない。


この朝も、ご丁寧に由梨への手紙が入っていて

「なんかわからないけど、気持ち悪いよねそれ」
「はい。すみません…」
「ううん。私は全然、花村さんは嫌だよねそれ」
スタッフルーム前で、由梨はそれを開けた。

いつの写真かと思えば、昨日の夜の帰宅の写真だった。

「はぁ…」

ため息をついて、封筒に直したところで、ドクタールームの部屋があいてぶつかってしまう。

「あ、ごめん」

写真が封筒から飛び出て散らばってしまう。
ドクタールーム出てきたのは渉だった。

「…なんだ、これ」

「最近…ずっとなの。隠し撮り…」
由梨はそれを一枚ずつ拾う。
「警察には?」
「言ったよ。でも、これくらいじゃ何も出来ないんだって」
「帰り送ってやるよ」
「いいよ、これまで何もないんだから」
「これまで何もないからって、今日も何もないとは限らないだろ」
「渉だって暇じゃないでしょ」
「由梨、俺はもう後悔したくない」

「あれ、どうかしました」
夏菜子が由梨と渉を見たので、由梨はスタッフルームに入って、その写真を片付けた。
「あ、昨日の至急で出した検査データ届いてるかな」
「今見てみます」

夏菜子が早足で歩いていく。

「由梨だって、こんなの怖いだろ?利用するくらいの気持ちで頼れ」
「…わかった…ありがとう」

渉の医師ぶりは4日目のこの日には板についてきていて、由梨の目には少しだけ頼もしくなったように見える。

「うーん…。念の為にレントゲン、とってみましょうか」
「え、大袈裟じゃないですか?」
急がしそうな男性は早く帰りたいという雰囲気だ。
「気になるので、念の為にです」
にこやかに渉が告げていて、由梨はエックス線室の準備をする。

「あとは、やるよ」
「はい」

撮った写真は明らかに肺炎の画像だ。

「花村さん、紹介状はどうする?」
「あ、はい。ここで、入力して下さい」

由梨はパソコンを触って画面を出す。

「ここね、ありがとう」
由梨は事務に伝えて紹介先である桐王大学附属病院に電話をしてもらう。

「え、入院ですか?」
冗談じゃないと言いたげだ。
「どんな病気もそうですが、風邪だと思い込んで甘く見るのは行けません。肺炎はきちんと入院すればなおりますから」
「はぁ…」

それでもまだ、入院は大袈裟だと言いたげである。

肺炎と、いえば貴哉もそれで入院したのだったな…。そんな事を思い出す。




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