【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜

すると兼仁おじさんは、急に力が抜けたようにそう呟いて。


そこにさっきまでの勢いは、もうない。



そして、急に振り返ったかと思えば、そばに立っていた俺の肩を両手でガシッと掴んだ。


突然のことに、俺も思わず心臓が飛び跳ねる。



「…神楽。どこかほかに…思い当たる場所はないのか」



そう問いかけるおじさんの目は、少し潤んでいた。


久しぶりに目を見て話しかけられたような気がする。



「…っ、そうですね…。

私も、思い当たる場所は大体探したんですが…」



「なにか、なんでもいい。心当たりは…っ。

お前なら何かわかるんじゃないのかっ!」



すがりつくかのような声で、そう言われた瞬間、胸の奥がドクンと音をたてた。



兼仁おじさんが……俺を、頼ってる……。


< 287 / 336 >

この作品をシェア

pagetop