嘘つき天使へ、愛をこめて

しかしそんな事が言えるわけでもなく、あたしはむっつり顔でお説教を受ける。


そんな様子を見ながら、不意に雅がははっと笑った。


「なんで笑うの」

「いや、なんかだいぶサリも人間らしくなったなと思ってさ」

「え?」


人間、らしく?あたしが?


「顔に気持ちが出るようになったってこと。柔らかくなったっていうか」


思わず両手を頬に添える。

そんなつもりはなかったけれど、あたしいつの間にか表情が緩んでる?


でも、言われてみれば確かにそうだった。

ここへ来た当初は常に警戒していたし、心には蓋をして大きな厚い壁を作っていたのに、今では家へみんなを上がらせてしまうくらい警戒心が緩んでしまっている。


慣れた、というのもあるのか。

だとしたら慣れとは恐ろしいものだ。


あたしは向かってはいけない方向に、気づかないうちに向かっていたのかもしれない。
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