嘘つき天使へ、愛をこめて

「ねえ、なんで別れたの?いつ?」

「人の傷心を抉るような質問だなおい」


大翔は深い溜息をつくと、おもむろに前髪をかきあげた。

やけに色っぽくて、どきりとする。


「お前の母親……咲妃と俺はまあ幼なじみみたいなもんだった。胡蝶蘭を立ちあげる前、十五の時から付き合って胡蝶蘭を立ち上げてから一年後、十八になる直前で別れた。告白してきたのも振ったのも向こうだったが」

「告白されて振られたの?」

「そこに食いつくな馬鹿」


いったいあたしの母親は、どれだけ大翔の心を抉りまくっていたのだろう。


その表情が痛々しくて、なんだかあたしの方が申し訳なくなる。


「俺が振られたのは、咲妃に他に好きな奴が出来たから……って理由だったけど、今思えば親友の為だったんだろうな」

「親友?」

「サリにも紹介したろ。俺の彼女だよ」

「あの人、かつてはママの親友だったの?」

「かつてはとか言うな。友情を勝手に終わらせるな阿呆」


いちいち突っ込んでくるな馬鹿、と言い返しそうになったがぐっと飲み込む。


それにしても、驚いた。

驚きすぎて逆に冷静になれるほど驚いた。


あのものすごく美人だった大翔の彼女が、あたしのママのかつての親友だったとは。
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