嘘つき天使へ、愛をこめて
「……あいつの過去は、とても俺に語れるようなものじゃない。それは雅自身から聞かねえとだめだ」
「そう」
何となくそう言われることを分かっていて、あたしは素っ気なく返事をした。
けれど雅の核心には、恐らくあたしは一生触れることはない。
もう、きっと。
「……話を戻すが」
「うん」
きっと、何もかも、手遅れだから。
「俺が初代総長の時代の彼女がな」
「うん、ママだよね」
「………………」
「姫、だったんでしょ?初代の」
大翔は黙りこくる。
顔を見ると、それはそれは気まずそうにあたしを見つめ、眉尻を下げていた。
前に大翔はあたしに言ったのだ。
あたしの母親は俺の元彼女だったのだと。
それで何故大翔のことを信じようと思ったのかは未だによく分からない。
けれど、なんとなく、もういないママがこの人は大丈夫だと言ったような気がしたんだ。