嘘つき天使へ、愛をこめて
「でね、サリちゃんこっち」
「え」
突然立ち上がったかと思うと、あたしの手を引いて窓際の席へと連れていく。
手をつかまれたことに一瞬心臓が縮まった。
唯織はそんなあたしの心象を知る由もなく、絶対的危ないゾーンにあたしを立たせた。
……ちょっとこれは、予測外なんだけど。
どう対応すべきか迷いつつ、とりあえず大人しくしておこうと黙ったまま目の前の人物に視線をむける。
すると、赤がかった髪の男はあたしには目もくれず、唯織へ視線を向けて僅かに瞳を細めた。
瞬間、背筋にゾワッと嫌な悪寒が走る。
――ああ、なるほどね。
「……唯織?どういうつもり?」
「いいじゃん、みっちゃん。こんなに可愛い女のコ、見たことないでしょ。天使だよ、天使」
……この人は、あたしの探していた人だ。