嘘つき天使へ、愛をこめて
「雫井サリ、か」
「……なにか?」
興味があるのかないのかよく分からない眼差しで、あたしを眺める総長に警戒を見せながら、小首をかしげる。
月岡雅――この顔の裏で、一体何を考えているのか。
さすがと言っていいのか、彼からは一切明確な感情が全く読み取れない。
「なんで君、白燕に転校してきたの?」
「特に意味はないけど」
「意味はない、か。まあ何かしらあったとしても言わないだろうな」
それはもちろん。
だけど特に意味はない、というのもあながち嘘ではない。
大翔があたしに言ったのは、胡蝶蘭のもとへ行けということだけだから。
この学校に通うか通わないかは、もともと自分で決めていいと言われていたし、通うことにしたのはちょっとした暇つぶしと時間短縮のためだ。