(A) of Hearts

そしておでこに手をやってみる。
やっぱり指先とは違う感覚。
夢の中でも、指でないのぐらいわかってた。たぶん唇がここに触れたんだろうなって。

ん?

いや待って。
そんなの思った?

とにかく心地よかった。それだけは覚えている。

だけどさ。
なんで芦沢さんがガキなんだろう。

いまのわたしの姿のほうがガキくさいよ?
こんなわたしに、あんな顔を見せるのは反則だよねえ。


『内緒』


うううう。
なにも意図がないにしろ、やっぱりああいう顔は、わたしには見せないでほしい。それは無理な注文? いま思い出してもドキドキうるさいじゃんか。


「はあ……」


よし。
切り替えスイッチオン。
気合入れてこう!!!

パチンと平手で頬を挟み込み数回叩いた。すこし早いけれど、いまから勤務体勢!


「それでは専務。いまからコンビニに行って来ます。お好みの具があれば、おっしゃってください」


パソコンに向かっている芦沢さんの背中に向かって声を掛けた。


「マヨ系以外」

「アレルギーでしょうか?」 


サンドイッチってマヨ入ってないのあるのかな。


「白飯にマヨは邪道だから食べたことがない。だけどサンドイッチなら許す」

「面白いことおっしゃいますね」

「こだわりだろ?」

「それは偏屈っていうんです。体質的に問題がないのならば、一度召し上がってみてください」


こういうところがガキくさいとか?
ま、いいか。
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