(A) of Hearts
そして部屋を出たわたし。
外まで出れば外はすでに明るいし、そろそろ出勤時間だということもあり人通りも多い。
フロントに聞いたところ、出てすぐ左に曲がった交差点にコンビニがあるそうだ。5分とかからない場所。
「んーっ、天気良し!」
靴擦れやふくらはぎはまだ痛むけれど履きなれた靴なので快調。いいお天気だしね。
なんて思っていたら携帯が鳴った。
「ん?」
アドレス登録されていない番号だ。
しかもワン切りじゃなく、ずっと鳴っている。
いまわたしは仕事用とプライベートを持っているけれど、鳴っているのは仕事用。
はっ!!!
まさかまたトラブル!!?
「おはようございます。SK会社、館野です」
『あ、もしもし? 俺だよ、俺、わかる?』
どこの俺様ですか。
オレオレ詐欺ってよく耳にするけれど、これもその一種なのかしら。
息を吐き出し切ろうとしたところで、
『俺だってば。早く思い出して』
知らないっての。
声だって聞き覚えないし。
だけどプライベート用ではない携帯。もしかするともしかするかも?
「——し、失礼ですけれど、お掛け間違いになっていらっしゃいませんか?」
『タイムリミット近し!!』
な、なんですって!!?
タイムリミット!?
なによそれ!
『カウントダウンいくよぉー? ごー、よーん、さーん、にー、いちっ!!!』
「あ、あの!!!!」
『答えられなければ秘書クビだよん』
「——え!」
なに。
誰よ!? 知ってる人!!??