テンポラリーラブ物語
 氷室が座った席はなゆみからは後ろになるので、振り返らないと見えない。

 だが向かい合って座っているジンジャからはよく見えた。

「氷室もしかして、あれ見合いじゃないのか」

「えっ?」

「氷室の隣には氷室に似たようなおじさんが座ってるから多分父親だろうな。その手前には女性が座ってその両隣は多分女性の両親だろう。ここからは後姿しかみえないけど、女性が着物着てるところみたらやっぱりあれは見合いだよ」

「ジンジャ、観察するのはやめなよ。みっともないよ」

「うん、そうだな。でもあいつ、なんか俺の顔見やがった。あっ、今、睨まれたような気がする」

「ジンジャがじろじろみてるからじゃないの。もう放っておこうよ」

「そうだな。ごめんごめん。折角タフクとここで食事してるのに、すまなかった。本当にごめん」

「ううん。もういいよ」

 口でそういいながらも、ほんとうはなゆみも気になって振り返りそうになっていた。

 そこに前菜が運ばれてきた。

 なゆみは料理に神経を集中させた。

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