テンポラリーラブ物語
 すぐにお互い自己紹介をし、その人は倉石千恵と名乗った。

 おっとりとした優しいお姉さんというイメージだった。

 千恵から色々と話しかけられ、なゆみは受け答えをしていると、メニューを突き出された。

 どの飲み物を選ぼうか迷っている時、先ほど見たジンジャとユカリの姿が目に浮かぶ。

 次のクラスの予定は分からないといいながら、ユカリと一緒に英会話学校へ向かったということは、なゆみを排除したかったと言うことなんだろう。

 教室を出るときに見せたユカリが微笑していた笑顔は、なゆみに対する勝利宣言だったのかもしれない。

 あれやこれやと考えていると、なゆみはわなわなと震えだした。

 飲もう! 思いっきり飲んでやる。

 やけくそな気分が感情を支配する。

 ミナに甘いお酒はどれかと尋ねると、桂花陳酒はどうかと薦められた。

 普段酒など飲むこともないなゆみには、初めて聞く名前で、どんな味のお酒か疑問符が飛び出たが、甘ければなんでもよく、言われるままにそれを頼んだ。

 もうなんでもいい。

 嫌なことを忘れたくて、この時ばかりはお酒が飲みたいと本気で思ってしまった。

 自分のために開いてくれた歓迎会がこんな形で役に立つとは思わず、純貴がみんなの前で正式に紹介した時、心から感謝の意を伝え、そして宴会は始まった。

 お酒が入ると皆陽気になり、ノリもよくなる。

 その雰囲気に乗っかるようにしてなゆみも自棄を起こしだした。

 この後お酒はなゆみをとんでもない事態へと招いていった。
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