別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「確かに一年も騙していたのは酷いけど、理沙の話では彼は別れるつもりで嘘をカミングアウトした訳じゃないんでしょ?」

「……そうだね、俺は何も変わらないんだ!って言ってたくらいだし」

正直、何都合良い事言ってるの? としか思わなかったけど。

「だとすると理沙にとってはラッキーなんじゃないの?」

「何で?」

どこにもラッキーさは見当たらないけど。

「だって理沙の彼氏の奏人君って一度見たけど、正直あれだよね」

「あれとは?」

「なんか全体的にパッとしないって言うか……にこにこしてばっかりで切れが無い感じだったし、仕事も駄目そうなイメージで、正直言ってどうして理沙が付き合ってるのか不思議なレベルだった」

そう言えば梓はかなりの毒舌だったんだ。奏人が可哀相なくらいボロボロに言われてる。

……ちょっとすっきりしてしまう。


「まあ私の感想はともかく、客観的に見ても、理沙の彼は予想以上にハイスペックな男だったって事が判明したって事じゃない」

「どこが? 誠実という長所が消えただけだと思うけど」

奏人の一番の魅力だったはずなのに。

「理沙の彼は大きな会社の御曹司なんでしょ? って事は結婚したら玉の輿じゃない」

「そう言えば……」

「とりあえず様子を見てみたら? 上手くいけば次期社長夫人じゃない」

理沙がニヤリと悪そうな笑みで言う。

でも、お金持ちでも、嘘つきは私としては嫌だけどね。
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