別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
奏人の後について部屋の中に入る。

広々としたスペースに、私達の仕事をするオフィスとは全く違う、重厚な雰囲気の机やソファーセットが置かれていた。

大きな窓からは太陽の光がさんさんと降り注いでいて、とても居心地が良さそうだ。


社長は机に座って、難しい顔で書類を眺めていたんだけど、奏人と私が来た事に気付くと、書類を机に置いて椅子から立ち上がった。


社長は、遠目から見た印象通りの人だった。

白髪が多めのふさふさの髪。ちょっとお腹が出ているどっしりした体格。

それ程大きくはないけど、ぎょろりとしていて強さを感じる目。

外見的には奏人との共通点が殆どない。

「社長、お呼びと聞きましたが」

奏人が声をかける。

「仕事中に悪いな」

社長は予想外に気さくな口調で答えてから、私に目を向けた。

「遅くなり申し訳ありません。営業部所属の中瀬理沙です」

社長からすれば、私なんて初対面に近い程馴染みがない相手だろう。

フルネームで名乗り、深く頭を下げる。

「営業部ということは奏人と同じ所属なのかな?」

「はい、アシスタントをさせて頂いています」

「そう、立ち話もなんだから座って」

社長は私に対してもフランクな話し方で、応接セットのソファーに座るよう促した。

< 174 / 208 >

この作品をシェア

pagetop