別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
そんな私の隣で、奏人は腕を組みちょっと不満そうに眉を寄せた。

「理沙が異動になるのはな……今まで営業部で頑張って来たのにな」

「仕方ないだろ、うちは社内恋愛について特に規制はしてないが、夫婦を同じ部署には置かない慣例なんだからな。お前達だけ特別扱いは出来ないぞ」

社長の言う事はもっともだ。

奏人が社長の身内だからって特別扱いをしたら、社員の不満が溜まってしまうし、同じ部署に夫婦のふたりがいたら、周りがやり辛いだろう。

私も異動は本意じゃないけど、仕方ないと思う。

「中瀬さんは、異動先の希望はあるかな?」

「え……いえ、特にはありません」

まさかそんな希望を聞いてくれると思わなかったし、結婚も先の事だと思っていたから、具体的に考えていなかった。


普段から営業部の仕事に満足して、特に異動したい所は無かったし。

「そうか……困ったな」

私が希望を言わなかったからか、社長は私が異動を拒否していると思ったようだ。

「あの、私は異動自体は……」
「まあ、場合によっては奏人が異動になるからまだ決めなくていいか」

「え?」

どういうこと? 奏人が異動?

「どういう意味だよ?」

奏人自身も何のことか分からないようだ。


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