別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「理沙に今でも好きだって言われたこと」

耳元に奏人の吐息を感じて、思わずビクリと反応してしまう。

それに気付いたのか、奏人はクスリと笑い、それから私の頬に手を添えて顔を近づけて来る。

え……これって……キスされる?

そう思って内心慌てているのに、なぜか私は抗えないし、制止する声も出せない。

どうしよう!

ただ呆然と奏人を見つめていると、唇が触れる直前で奏人がぴたりと動きを止めた。

え? 何で?

奏人は、意味が分からないまま固まる私からゆっくり離れる。

「今日は我慢しておく」

「え?」

「理沙が受け入れてくれるまで、耐えて待つ」

「な、何言ってるの?」

私は激しく動揺しながら、バッグの中をグチャグチャにかき混ぜて鍵を取り出す。

早く奏人の前から逃げなくては。あの妖艶って言葉が似合う微笑み……絶対、変なスイッチが入ってる。

焦りながら鍵を回し扉を開ける。

「送ってくてありがとう。おやすみなさい!」

言い捨てて素早くドアを閉じる。

「おやすみ」

笑いを含んだ奏人の声が聞こえて来た。


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