嘘つきには甘い言葉を
中学高校と同じだった俺たち。良夫は話も面白いし人気者で、無口でクラスから浮いてた俺を皆の輪に引っ張り込んでくれた。

周りにも「お前ら仲がいいよな」なんて言われていて、大抵いつも一緒にいた。
だから俺も良夫は親友なんだと思っていた。

高1の春までチビだった俺は「可愛い」なんて上級生にもてはやされていて、気づかないうちに先輩の怒りをかっていたらしい。

あの日、良夫に屋上に来いって言われて呑気に向かった俺には何の疑いもなかった。屋上で待っていたのは良夫ではなくやたらといかつい上級生たちで、有無も言わさず殴られた。
ボロボロになった俺にあいつは言った。「女の先輩に頼まれて、告白だと思ったんだよ」

だけど数日後、俺は知ってしまった。

良夫が俺を殴った先輩に「あいつ調子に乗っててムカつくんですよ。金持ちで何でも奢ってくれるから一緒にいるけど。まぁ、財布みたいなもんです」と言っていたことを。

俺の両親は医者で、家にいない代わりに金には不自由させなかった。「金がない」が口癖だった良夫と遊びに行ったら俺が出すのは当然のようになっていて、俺はそれがおかしいとすら思わなかった。

もう殴られるのは嫌で筋トレを始めて、半年後には身長は高い方になった。良夫とは遊びに行かなくなったけれど、余計に女に囲まれるようになった俺を親友扱いして、良夫が女に手を出しているのは知っていた。

友達なんて作らなければ裏切られることもないわけで、誰にでも適当に愛想よくして深入りしなければいい。望んでいなくても金と外見につられて寄ってくる奴らばかり。

俺は友達も女も、使い捨てみたいに考えるようになった。

……あの日、涙を浮かべて俺を睨みつけた瞳。
あの目に出会っていなかったら、今も俺は同じだったかもしれない。



スマホの着信音が現実に引き戻す。

サークル幹部のミノルからだったから、仕方なく電話に出た。
「隼人! 彼女といちゃついてる場合じゃねーよ。オーナーさん来てるから、さっさと戻ってこい!」
うるせーよ……。
「はいはい」

SIZEのクリスマスイベントには毎年格安でこのクラブを使わせてもらっているから、俺が挨拶に行かないわけにはいかない。
思わず出たため息を無視して、俺は階段を降り始めた。

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