ポイントカードはお持ちですか?
1 誕生日プレゼントはもらえますか?



私は深夜2時28分に生まれたらしいので、仕事から帰って、買ってきたカツ卵とじ丼を食べて、録画していたドラマとニュース番組を見て、シャワーを浴びて、寝て起きたら・・・30歳になっていた。

━━━━━あっけない。

誕生日の朝、ベッドの上で最初に浮かんだ言葉がこれだった。



最後に彼氏と別れてから数年。
30女が「誕生日なんで!」とわざわざ休暇を取ったところでどうせすることもない。
普段見ないし見たいとも思わない昼のワイドショーや再放送ドラマを見るだけだから、いつも通り出勤する。


ワクワクすることなんて何もないのに、幼い頃うっかりタンスに貼ってしまったシールみたいに誕生日の特別感はぬぐいされない。

ここぞとばかりに気持ちよく晴れ渡った青空が、私の三十路を嫌みなくらい言祝いでくれている気がする。


ありがとう、神様。
今日は山に入る日だから、正直助かります。

そう、私の本日の予定は山に入って境界確認と測量に立ち会うこと。
雨なんか降られると、まあ見事にドロドロになるから、晴れることはプレゼントみたいなものなのだ。

あはは、ささやかすぎる~。
だって、絶対他にプレゼントなんてもらえないもん。


服装は当然作業着。色は紺。
まだまだ暑いけど長袖長ズボン。
これに同色のキャップをかぶる。
汗は絶対かくのであらかじめ着替えも用意する。

誕生日だからって浮かれた気持ちを挟む余地は一切ない地味さだ。

ふわんとかかったパーマが無意味になるまとめ髪。
せめて、とお化粧だけはいつもはしないマスカラもカッチリ塗り込めた。

しばらく使ってなかったから固まっていたマスカラがダマになる。
浮かれそびれた気持ちが更にトーンダウンだ。

まあ、別にいいや。
もうどうでも。



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