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私が勤めているのは、県の地域振興局建設部企画課。

県で道路を通したり、土砂崩れ防止の措置を取ったりする工事に関して企画を詰め、業者さんに受注するという仕事だ。
色気もそっけもない。

職場は男性率が高いけど、年々採用が減っているせいもあって若い人は少ない。

でも結婚する人はしてるから、寂しい独り身は私個人の問題なのかもな。

理想が高いのかと言われれば違うと思う。
別にイケメンじゃなくてもいいし、経済的には自立できているから高収入でなくてもいい(普通に働いてくれさえすれば)。

ドキドキして「この人とずーっと一緒にいたい!」って思える相手であれば・・・。

それが、無理なのか?

口ではそう言っても、ひとえにやる気が起きない。
結婚はしたいけど、恋人は欲しいけど、具体的に動くのは面倒臭い。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日で全然構わないと思ってしまう。



職場に着くと、ちょうど出勤して来たばかりの奈美さんから声を掛けられた。

「咲里亜ちゃん、おはよう」

あ、言わなくてもいいです。
〈サリア〉なんて100円ショップみたいですよね?

でも私のせいじゃないし、私が生まれたときには(少なくとも地元には)その100円ショップはなかったので、一応親にも罪はない。

初めての子の名前で悩みに悩んだ両親は、思考のポケットに落ち込んで険悪になったらしい。
で、父親が「順子か咲里亜かどっちだ!」と母親に迫った。
母親は「・・・だったら咲里亜(まだしも今っぽいし)」と答えたので、この名前になったという。

そもそもなぜ「順子か咲里亜」だったのかについては、未だに謎のままちょうど30年を迎えた。


「奈美さん、おはようございます」

奈美さんは非常勤職員でこの道12年のベテランさん。
転勤がある我々職員より長くここにいるため、部長すら一目を置く陰のボス的存在だ。

母娘ほど年は離れているけど、隣の席ということもあってとても親しくしてもらっているのだ。
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