ポイントカードはお持ちですか?


「伊月君、元に戻ったね」

私を呼びに来た奈美さんが、遠ざかる伊月君を見てそう言った。

「戻った?」

「うん。前のボサーッとした感じに」

「髪は、また伸びたかもしれませんね」

以前のように目元が隠れるほどではないものの、少し長くなっている。

「髪だけかな?なんだか背中がくすんで見える。シャンとすればまた格好よくなるだろうけど」

「そう、ですね」

一応同意してみたけれど、私にはそんな風に思えない。
私に客観的な判断は無理だ。
もうずっと素敵にしか見えないのだから。

「あ、咲里亜ちゃん、課長!」

「おっと、そうでした!」

伊月君に関して、私は誰よりわかっていないのかもしれない。



< 102 / 143 >

この作品をシェア

pagetop