ポイントカードはお持ちですか?



頑なに接触を拒否しているからどんなきつい人かと思ったら、ものすごくズボラなだけのむしろ気のいいご夫婦だった。

県からの電話は「誰かよくわからないから」と出ず、通知も単純に開けないまま放置していたらしい。

伊月君が残したメモを奥様が見つけて、「そういえば前にも手紙が届いていたっけ」とようやく電話をくれたのだそうだ。


そんなわけで、むしろこちらの方が「いいのか?」って思うほどあっさりと話はまとまった。
本当に気のいいご夫婦なのだ。

お暇しようとする私たちに「今日はクリスマスイブだから」ってケーキだチキンだ(お茶受けとして!)と用意してくれて、コーヒーだ、紅茶だと次々出てくる。

最後は日本茶をわんこそば形式で注がれて、ようやく玄関を出たのは19時。

私はいいけど、伊月君は大丈夫なのだろうか?


そう思っても「風見さんに連絡したら?」と言ってあげなかった。
「だって仕事だし」と言い訳して。



その帰路。

半分まで来たところで工事中の看板が出始めた。
行くときそんなものはなかったので不思議に思っていると、交通整理している方が運転席までやってきた。

「この先で土砂崩れが起こって通行止めになっています」

「土砂崩れ!?」

「今夜中に復旧できるかどうかわからないので、戻って迂回していただけますか?」

示されたルートはわからないことはない。
だけど、

「これってだいぶ時間かかりますよね?」

「はい。ここが県を跨ぐ主要道路なので、戻って迂回するとたぶん2時間半から3時間かかります」

3時間・・・!!
嘘でしょう!

この人に掴みかかりたくても、彼に非があるわけではない。
むしろクリスマスイブに徹夜で復旧作業にかからなければならず、彼だって被害者だ。
3時間で帰れる私たちの方がマシだろう。


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