ポイントカードはお持ちですか?
薄暗い中でほとんどテレパシーに近いやり取りをした結果、お互いそっと手を離す。
「・・・風見さんは?」
「なんで風見さん?」
「付き合ってるんじゃないの?食事に行ったよね?」
「『相談がある』と言われて食事には行った。でもそれだけだよ」
付き合ってると思っていたのは私の妄想が肥大化しただけだったのか?
言われてみれば、はっきりと確証があったわけではない。
ただ、風見さんが伊月君を好きなことは確かだったのだけど。
「何か言われなかった?」
「東京で就職しようかと考えている、って」
「なんて答えたの?」
「『頑張ってください』と」
それは、風見さんにとっては告白の一環だったのではないだろうか。
伊月君が引き留めるなり、悲しむなり、何か彼女に対する執着を示したなら、想いを告げたかもしれない。
「咲里亜さんはいいの?もうだいぶ遅いけど連絡しなくて」
時刻は10時を回っている。
「あ、言ってなかったっけ?課長からの縁談はお断りしたよ。だから今日は何も予定ない」
「・・・そう、なんだ。うまく行ってるって聞いてたのに」
「だってどうしても伊月君が好きなんだもん」
よかった。言えた。
今勢いで言ってしまわないと、もう絶対に言えない気がした。
こんな特別な日に、こんな異常事態で二人きり。
頭のネジがゆるむのは、きっと今しかない。