ポイントカードはお持ちですか?
隣の市にはドライブがてらよく行っていた。
何しろお付き合いを隠していたので、地元ではデートしにくかったのだ。
今はもう隠す必要もなくなったのに、伊月君の希望で向かっているのだけど。
「今日はどこに行くの?」
「ここ、3つ回ろうと思う」
運転席と助手席の間に無造作に置かれていた封筒を渡される。
乗ったとき「なんだろう?」とは思ったのに、次の瞬間には忘れていた。
なになに?
「━━━━━結婚式場!?」
「大体遅くても半年前には埋まっちゃうらしいんだ。暑いのも雪が降るのも辛いだろうから、季節は春か秋がいいと思う。もう春は無理だから秋しかないと思うんだけど、そろそろ動かないと間に合わない」
「・・・それはそうだけど」
「異動もなかったし、新年度が始まれば忙しくなるから、今いろいろ済ませた方がいいと思う。来週か再来週には咲里亜さんのご実家にご挨拶に行くから都合聞いておいて。うちの方はいつでもいいって」
「・・・うちもいつでもいいと思うけど」
「ゴールデンウィークに結納したいから。そっちの場所は何カ所か候補挙げてあるから選んでもらって。どこでもよければ一番上にある小料理屋さんにする。それも確認しておいて」
さすがに、仕事が早い。
結婚式までの段取りや日取り・場所の候補、予算、各種パンフレットなんかがひとまとめになった封筒。
気持ちは嬉しいけど、私はそれをグイッとつき返した。
「ポイントがまだ貯まっていません」
「結婚ってどうやってするのー?」とか言っておいて贅沢だとはわかってる。
だけど、30過ぎたって結婚に夢や憧れは持ってもいいじゃない。
こんな事務連絡みたいに結婚したくないんだよ。
風見さんに言われたせいもある。
やっぱりぬるーっとじゃなくて、一言ほしい。
一言でいいんだ。