ポイントカードはお持ちですか?

「ほんと、片思いなんてしてる場合じゃないのに。もうチャレンジも怖くてできない。砕けたら二度と元に戻れない気がする。例え復活できてもその傷を癒す間にもっと年を取るんだと思うと、安全な橋以外はわたりたくない!」

「わかるわかる。『また次がある』なんて安易に思えないよね。うっかり告白なんかして『おばさんがイケメンに群がってる』って若い子たちに陰口言われるだけだよ」

「私も伊月君も同じ職場であと30年くらい働くわけじゃない?その間ずっと不名誉なレッテルがつきまとうんだ」

「それで伊月君の方が結婚してさ、その相手が同じ県職員だったら最悪よ?奥さんの方と同じ課になっちゃったりして」

「『よろしくお願いしまーす』って笑顔で挨拶しながら『あー、私の夫にすり寄ってた女か』って思われるんでしょ?最悪!もう死ぬ!」

「やめろやめろ、暗い未来しか見えない」

どんどんどす黒く塗られていく私の未来。
もちろんこれは最悪のパターンだけど、まったくあり得ないとは言えないのだ。

それで私の方がずーーーーっと独身だったら・・・。
子どもがどうとか言う前に、そっちの方が大問題なのだ。

ときめいて、好きになって、愛を深めて、結婚。
普通のことだと思ってたのに、本当に難しいんだな。
相手のあることだから、自分の努力だけではどうしようもない。

小さい頃は将来結婚するのは当たり前だと思っていて、七夕の短冊に「けーきやさんになりたい」(ケーキが食べられると思って)と書いたものだ。

「およめさんになりたい」に訂正すべきだった。
サンタさんにも「だんなさんがほしい(大人になるまで保留)」と頼むべきだった。

あの短冊から20年以上経った今、わたしは『けーきやさん』にも『およめさん』にもなれていない。

本当に伊月君なんかに足を引っ張られている場合じゃないのに。

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