ポイントカードはお持ちですか?
「咲里亜さん、これお願いします」
思い出していた声が聞こえてビクッと振り返る。
くたっとした作業着でも他の人とは違って見える。
それはサラサラの髪のせいなのか、きれいな眼球のせいなのか、私の気持ちのせいなのか、とにかく、伊月君だけは特別。
「最近、ずっと忙しそうだけど身体は大丈夫ですか?」
「伊月君ほどじゃないよ。これ、わかりました。ありがとう」
クリップボードをひったくるように受け取って、伊月君に背を向けた。
伊月君とはこういった最低限の接触しかしていない。
これが不自然であることは自覚していても、自分でコントロールできない。
なかったことにして忘れて、って私が言ったくせにね。
少しだけ逡巡して、伊月君が自分の机に戻ったのを背中で感じる。
雪が降ってしまえば現場に出られないので、この時期は駆け込みで仕事が忙しくなる。
私同様、伊月君も目が回るほど忙しいのだ。
こうやって仕事に没頭していれば毎日はとても早く過ぎていく。
そして今年度が終わったら伊月君は異動だ。
姿が見られない寂しさはあるだろうけど、姿を見て感じる苦しさもなくなるはずだ。
「仕事仕事仕事仕事」
仕事があって、本当によかった。
そうでなければただただ絶望するだけだった。