ハロウィン
ハロウィン?
「ハロウィン?・・・何ですか?それは」


先生の問い返しに俺は数回瞬き、少しだけ戸惑った。
先生でも知らないことがあるんだな・・・。
そう思うと俺は少しの優越感を得れた。

「ハロウィンと言うのは一種の行事ですよ。アメリカとか外国では子供はみんな仮装して各家を回ってお菓子を貰うんです」

俺の答えに先生は「ああ」と声を漏らすとにこりと微笑んだ。

「古代ケルト人が起源と言われている祭りのことですか」

先生はそこで言葉を切ると小さな声で「確か・・・」と呟いた。
それと同時に俺の少しの優越感が軋む音をたてた。

「もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事だったようですが現代では特にアメリカ合衆国で民間行事として定着し、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっていると言うあれですよね?カボチャの中身をくりぬいてジャック・オー・ランタンを作って飾ったり、アナタが言うように子供たちが魔女やお化けに扮して近くの家々を訪れ、お菓子を貰う風習の。・・・確か【Trick or treat.】 『お菓子をくれないと悪戯するぞ』または『悪戯かお菓子か』と唱え言うんですよね?」

先生のその回答に俺の少しの優越感は完全に崩壊した。

「先生、知ってるんじゃないですか・・・」

俺はそれだけを口にし、大きな溜め息を吐き出した。

本当に先生は質が悪い・・・。

「忘れていたんですよ。はめたわけではありません」

先生はそう言うと悪びれる様子もなく笑んで高くなった空を仰ぎ見た。

「やります?」

先生の言葉に俺は小首を傾げた。

やる?
一体、何を?

「ハロウィンですよ」

先生のその言葉に俺は瞬いた。

まさかあの皆を呼んで?

「本物のモノノケによるハロウィン・・・楽しそうじゃないですか」

先生はクスクス笑いながらそう言うとスッとその姿を音もなく消してしまった。
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