縁側で恋を始めましょう
「お前が珍しく小量の酒で潰れたって連絡があったんだ」
「あー、そうだったのね……」
香苗が笹本にSOSの連絡をしてくれたのか。
若干酔いが残る頭で考え、笹本にお礼を伝えた。
「ごめん。迷惑かけて」
「今更だろ。ほら、もうつくから」
タクシーは見慣れた一軒家の前で停車し、笹本は支払いを済ませて私の腕を掴んで車から降ろした。
そのまま発車するタクシーを見送る。
「笹本? タクシー行っちゃったよ?」
ぼんやりとしたまま間延びした声で笹本を見上げる。
てっきり、笹本はそのままタクシーで帰るのかと思っていた。
すると、笹本は無言で私を見下ろしていた。