縁側で恋を始めましょう


「とりあえず、お疲れ」
「お疲れー」

運ばれてきたビールのグラスを鳴らして乾杯し、適当に注文した料理に手を伸ばす。
しばらく他愛のない雑談をした後、笹本が聞いてきた。

「で、同居人はどうよ?」
「どうって何が?」
「楽しくやれてんの?」
「まぁまぁかな。この間香苗にね……」

と、先日香苗と話した内容を笹本にも話すと「確かにな」と頷かれた。

「仕事のことだけじゃなく、そいつがどういうつもりで家に転がり込んできたか、ちゃんと聞いた方がいいと思うぜ」
「転がり込むって……、もとは暁んちの物だけどね。でも、いくら姉弟のように育ったからって、何でもかんでも聞いて詮索するのもどうかなって思ったりするの。暁が話したくないなら別にいいかなって」

暁はもとからあれこれ自分から話すタイプでもないし……。

「でも気になっているんだろ?」
「まぁ、小説家としての活動状況とか、バイトしているならどんなのかとか知りたいな、とは思うけど……」
「仕事については、言いたくないなら無理に聞き出さなくてもいいと俺は思うけどね。それよりも、前に住んでいたマンションを引き払ってまであの家に来た理由を知りたいけどな」

笹本は暁の仕事より、引っ越してきた理由を聞けと何度も話していた。


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