縁側で恋を始めましょう


一体どんな顔をして会えばいいのだろう。
だってあんな暁知らない。
あんな男をむき出しにした暁なんて初めて見た。それを向けられたのも初めてだ。
だって私の知る暁は、ちょっと草食系の穏やかな淡々とした性格だ。
あんな、色気のある熱っぽい目など見たことない。

それに、キスだって……。

あぁー、どうしようどうしよう、とゴロゴロとベッドで呻いているとコンコンと部屋がノックされた。
ドキンとして、思わずがばっと起き上がる。

「紗希? 起きている? 遅刻するよ」

扉の外で暁が声をかけてくる。

「は、はい! 起きています!」

慌てて返事をすると、「ご飯食べちゃって」と返事があった。

「はい……」

返事をすると、暁が扉の前から去っていく気配がする。

「なんで敬語……」

敬語で返事してしまうなんて意識しているのがバレバレだ。
でも、暁はいたって普通の声だった気がする。


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