縁側で恋を始めましょう

「ひゃっ、何」
「絆創膏。こっちの方が自然だよ。何、ドキッとした?」

絆創膏? と首に手をやると確かにキスマークらへんに絆創膏らしきものが貼られていた。

「そんなに大きくつけてないんだし、これで十分だよ」
「……そもそもつける意味が分からないんだけど」
「え、なに?」

暁の笑顔に思わずキッと睨み付ける。
聞こえているくせに、と思う。
しかし、ここで口論していても仕方ない。出勤時間は過ぎており、本当に遅刻ギリギリになってしまう。

「もういい!」

ふんっ! と顔を背け、玄関を出ようとした時、「あ、紗希」と腕を引っ張られた。反動で振り返ると、目の前には暁の顔があり、そのままかすめるように唇を合わせた。

「なっ……!」
「いってらっしゃい」

驚愕している間に、暁は私を追い出し、笑顔で玄関を閉めた。







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