縁側で恋を始めましょう




『紗希ちゃん、一緒に遊ぼう』

そう言って後ろからトコトコとついてくる幼い頃の暁は、それはそれは可愛かった。
昔から愛らしい容姿をしており、女の子に間違われることもあった暁。私たちはお互い一人っ子で親同士も仲が良かったからまるで姉弟のように育った。
暁は優しくて、甘えん坊で、いじめるとすぐに落ち込んでしまうそんな可愛らしい子どもだった。
そう、可愛かったのだ。

それなのに。

なんなのだ、あれは。

なんなのだ、あの男は。

あれは私の知っている暁ではない。
遊んでと後ろを追いかけてきたあの愛らしい少年はどこへ行った。どこへ消えてしまったのか!

それに首筋にキスマーク付けられたことばかりに意識が行っていたけど、実際にキスされているではないか、唇に。


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