縁側で恋を始めましょう



「何?」
「お前、あの幼馴染と何かあった?」

そう聞かれてドキッとする。

「別に……。なんで?」
「いや。なんか気になっただけ。それにしても、あの幼馴染はイケメンだけど困ったやつだな、いい歳してニートだなんて」
「それは……」
「30手前で夢を追い続けるのはいいけど、結果がでないとみている方が辛くなる」
「……そうだけど。でも暁は頑張っているよ。生活費だって払えているし、自立している」

ムッとして言い返すと、笹本がため息をついた。

「だからさ、お前、幼馴染と何かあっただろ」
「ないってば」
「じゃあなんで急に庇いだすんだよ。あいつの将来を心配していたのはお前だろ」

そう言われると言葉に詰まるが、笹本に暁のことを言われるとなぜかカチンときた。

「だからって、他人に言われるのは何か嫌」

そう言い捨てて、お盆を持って立ち上がる。
笹本はどこか呆れたような、疲れたような表情で「お前だって他人だろ」と呟いた。

別に笹本が悪いわけではない。わかっている。私だって他人だ。
ただ、暁のことを悪く言われるのは嫌だった。暁を悪く言えるのは、私だから言えるのだ。





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