縁側で恋を始めましょう


「ねぇ、本当に重いってば」
「いいじゃん、別に」

そう言って甘えるように更に頭を背中に摺り寄せてくる。

「もう、そういう所が本当に……」
「弟みたい?」

声のトーンが低くなり、背中の重みが消えた。
暁は私の背中から離れて隣に座る。その表情が少し冷たい。
あぁ、やっぱり『弟』は禁句ワードだったか。
だったらそういった行動をしないでほしい。そう言いたいけれど、なんだかうまく言葉にならない。
暁はずっと『弟で幼馴染』だった。それ以上でもそれ以下でもなかったはずだ。

それなのに。

あの日から、暁の姿が私にはぶれて見える。
時々見せる男の顔にどう反応したらいいのかわからないのだ。
私の知らない暁に戸惑う。戸惑って、心臓もうるさく鳴るのに、暁の側は居心地が良くて嫌ではない。
どうしてだとため息が漏れる。


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