縁側で恋を始めましょう


「空野アカツキ?」

全て違うタイトルの本だが、作者名は全て空野アカツキだ。
空野アカツキといえば、確か、ここ数年注目を浴びてきているミステリー作家だ。昨年、この人の本が原作のスペシャルドラマが放送されていた。
確か、今日のお昼のテレビ番組でも新刊が出たと特集されていたのを見たな……。
作者はメディアに一切出ないため、男か女かもよくわかっておらず、それだけでもネットではいつも話題をなくさない。

「なんで、この人の本だけ……」

しかもハードカバーと文庫本、それぞれそろっている。
私も空野アカツキの本を読んだことがあるが、ここには全巻揃っているのではないだろうか。
どうして、暁の部屋に? ファンなのだろうか。
それとも……この人……。
チラッと暁を見る。

「まさか……ね」

ひとつの考えが浮かんだが、まさかと頭を振る。
いやいや、それは違うだろう。もしそうだったら、ウチの親か暁の親から話があるはずだ。
そうじゃなくても、地元の友達とか何かしら情報が耳に入るだろう。
だが、そんな話は一度も聞いたことがない。きっとこれは熱烈なファンなのだろう。憧れているのかもしれない。

そう納得してチラッと後ろを振り返ると、布団の上で暁はぐっすり眠っている。その寝顔は昔のまま変わらなかった。










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